親には親の言い分!子には子の言い分!当事者よ、どう生きていく? 講演会を
開催しました

2013年6月22日(土)14:00〜16:00、『親には親の言い分!子には子の言い分!当事者よ、どう生きていく?』講演会を開催致しました。
タイトルが示すとおり、今回は、
【自立や親離れに対して、親子それぞれの言い分を話してもらおう】というテーマで行いました。
これまで、自立を成し遂げた当事者の、そこへ至るまでのドキュメントを聞く機会は多数ありました。
また、昨年には、親の立場から講演をしてもらう、親対象の講演会を実施しております。
それに対して今回は、『まだ自立はしていない。それでも、外に向けて発信したい思いや“言い分”がある、という当事者の声を聞く機会を設けたい』と思いました。
そのため話し手(講師)には、
今はまだ自立していないが自分の中で思いや考えはあり、親に対しても伝えたいことがあるという若い当事者と、その当事者の親ではないが、障害のある子どもを育てて、もう子どもは自立しているという親に来ていただきました。

当事者としての話し手は前田大輔さん、親としての話し手は上田千尋さんです。


前田大輔さんの話
僕は今、大阪人間科学大学の3回生で21歳、専攻は社会福祉です。
支援の技術や制度面も勉強していますが、大切なことは支援の際、障害者を属性で見るのではなく、個人として見るということです。
大学での勉強を通じて(高校時代にも抱いていたが)、一人暮らしということも、夢として描くようになりました。
しかし一人暮らしを実現する上では、経済的なことが一番ネックとなってきます。
母親からも「先ず
手に職を付けてから、家を出て行くならどうぞ」と言われています。
僕自身、社会経験はまだまだ少ないです。そのことを、親や周りの人から言われることは少なくないですが、
『社会経験が少ない』の一点だけを見て、その人のことを決め付けてしまわない様に、周囲にはお願いしたいです。

社会経験というのは、必ずしも健常者が一般的にするものだけを指すのではないと思っています。
僕自身、支援学校や訓練施設を通じて、僕なりの人間関係や社会との関わりを経験してきました。
社会性と一言で言っても、一人一人違うので、『これ』という一つの正しい答えは無いし、あまり安直に「障害者やから、社会性が・・・・・」と判断しないようにして欲しいですね。

親に言いたいことは、昔ケンカした時に、親から
「障害者やねんから我慢せなアカンねん!誰がお前の面倒見てると思ってるんや!」と言われたんですけど、その一言で僕も頭の中が熱くなって、「一人暮らしになりたい」と思うようになりました。
自立生活が難しいのは事実ですが、「だから絶対にムリだ、絶対に出来ない」という考え方は、変えていかないといけないと思います。
でも、今の僕には、親の考え方を変えるのは難しいですね。
つい「仕方がないか、親やから。親も自分より二十年も三十年も長く生きてるんやし」と、譲歩してしまう自分がいます。

普段、自分が一生懸命服を着ている時でも、親がすぐササッと着せてしまいます。
そんな時は、「自分は今一生懸命着ていて、最後まで自力で着たいのに!!」と思ってしまいますが、やってしまうのが親の性(さが)ですかね。
親の気持ちを理解しないとは言わないけど、やっぱり子どもとしては、
【子どもの気持ちを先に立ててほしい!】
これが、一番僕が今日お伝えしたいことですかね。
親はどうしても先に死んでしまいますから、最後子どもが一人になった時のことを考えて、支援してほしいのです。

あとは、障害というものに対する、親の考え方や価値観ですね。
これはなかなか難しい問題で、正直、親の勉強不足というのもあるのでしょうけど、「この子はどこまでは出来て、どこからが出来ないのか」という線引き≠巡って、親とぶつかることがあります。
最近では自分のほうが譲歩して、「あ、そうかそうか。解った解った」と思うようになってきましたが、思春期の頃はどうしても「ワーッ!!」てなっていました。

ただ、親も自分の価値観を押し付けてきますけど、僕も子どもの価値観を親に押し付けたいという思いが、正直あります。
せめぎ合いがすごくありますけどね。
【親は正しいけど自分を通さないといけない】という・・・・・。

でも、やっぱり
【子どもの気持ちを第一に考えて欲しい!】という思いです。

親の方が絶対先に死んでしまうのだし、その後のことを考えての支援というのが必要です。
例えば将来社会に出た時、自分が何か正しいことをしても、社会はなかなか認めてくれないかも知れません。
努力しても失敗したら、『失敗した』という部分だけしか観ないかも知れません。

では、正しいことをした自分を、誰が認めてくれるのか?
それは親しかいないと思っています。
失敗しても『努力した』自分を認めてくれるのは、親や家族だけだと思うのです。

もし親や家族も認めてあげないとなると、子どもは心にポッカリ穴が空いてしまうでしょう。
だから、ただただ何でもいいから自分を認めてではないけど、社会に対して努力したことを、親や家族が受け止めたならば、子どもにとっては大きいんじゃないか?と思っています。

それと親に限らず、支援者に対してもお願いしたいことがあって、やっぱり福祉の人は、障害者の出来ないところや弱い部分を観るのは得意なんですけど、それだけだと当事者としては、何か人として馬鹿にされたのかな?と感じます。
障害者以前にその人としての、強い部分やいいところも観てほしいと思っています。
障害者だって一人の人間として、
自尊心や自己肯定感を育てていく必要はありますから。













上田千尋さんの話
私の子どもは37歳の脳性麻痺の人で一人暮らしをしていますが、過去、子どもを育ててきた中で、自分の神髄としては、「後から『しまった』と思わないようにする」と、ずっと思っていました。
それでも後で子どもから「何故あの時○○したのか?」と問われると、「ああ!子どもはそういう風に考えていたんだ!」と気付かされる事もしばしばでした。
まだ子どもが小さかった頃、障害者のグループが運動で「親は敵だ!」と言っているのを聞いた事がありました。
その時はその意味が理解出来ず、「私は子どものためにこんなに訓練をさせて、あっちこっち走って、親としての義務に従っているのに、何故『敵』となるんだろう?」と思っていたのです。

やがて子どもが30歳になる頃、子どもとの会話の中で、『敵だ』の言葉の意味が漸く解りました。
つまり、先程の前田さんの話でもありましたが、障害のある子どもが、自分で服を着ようとか、何かをしようとしている、またはプランを立てている時に、
親がサッサとやってしまったり、「そんなん無理や」「周りに迷惑掛けるから止めとき」と言って、或る意味子どもの芽を摘んでしまう事、それを指して『親は敵だ』と言っていたんだと解ったんです。
だから私も、「
どれだけ自分の子どもの芽を摘んできたんだろう?」と思い、背筋がゾッとしました。

身体障害の子どもに限らず、知的障害でも学習障害でも発達障害でも、子どもが何を考えているのかな?という事を、親は何か切っ掛けがあると、見えてくるものなんじゃないか?と思っています。
そして親というのは、実は社会に対して、障害者(自分の子)の持っている力を、
アピールしていける側、していかないといけない存在なのだと思うのです。

前田さんは、今ある種の壁にぶつかっている面もあるのかな?と感じましたが、そこで止まらず、まだまだ若いし、一つ一つ課題を整理して、挑戦・クリアしていってほしいです。
自立や一人暮らしも出来るとは思うし、とにかく
折れてはダメです
山があったら越えていかないとね、その山というのは両親かも知れないし、社会かも知れないですけど。

私たちの年代いうのは、というと戦前生まれかな(笑)、「子どものことは最後まで親がみる」というのが、どうしてもあるのです。
だから『捨てられない』というのがあって、そういう面での親の辛さというのか(笑)。
自分で産んだ以上、最後まで面倒を見たい、というのかな?
これは子どもが障害者である場合に限らないと思いますけど、口では「知らん!」と言っていても、どっかで「私が・・・・」と思っている、でも、「独り立ちさせなきゃ」という思いも強いです。

障害があるという事での、「どこまで面倒を見るのかな?」という思いは背中にはありましたが、そこをどうしていくか?となった時に、ここは行政に頼むとか、どこそこに頼むという
引き出し≠ヘ持っておくべきだと思います。
また、行政とのタイアップも独りだけでは出来ないし、行政からの対応で悔しい思いをしたこともあります。
生き方はいろいろあるけど、前田さんも『周りに解ってもらう努力』をして(しているとは思いますけど)、一人暮らしを目指していってほしいですよね。


きいて〜!

後半は、質疑応答のほか、会場全体でのディスカッションを行いました。
以下、主なやりとりをまとめます。

母親@:「前田さんは、自立のことで親子と向き合う事はありますか?いつ頃自立について考え始めましたか?」

前田:「親も出来るだけこっちに負担を感じない様に発言してくれてますけど、高校生ぐらいから考え始めましたね。なかなか突っ込んだ話を出来る時間はないですけど」


母親@:「今横にいるのが私の娘で、高校2年ですが、親子で向き合って話をしたことが無かったので、一度そういう話をしてみる切っ掛けになればと思って訊いてみました。有難うございました」


上田:「娘さんは、お母さんに言いたい事はしっかり言ったほうがいいですよ。自分の障害のことでも何でも。高校2年だったら、すぐに就職という時期になりますから、言いにくいこともあるだろうけど、もっと何でも話をしていった方がいいです。自分の生きる道だから」


母親A:「前田さんにお訊きしたいのですが、何歳ぐらいで自立したいと考えていますか?」


前田:「今はまだ大学在学中で、まだその辺は見えていない部分があるというのが、正直なところなんです」


母親A:
「私の息子は19歳で、4年前から自立ということを意識して、なるべくヘルパーさんと一緒に外出するようにしています。息子が22歳になったら背中を押して自立させようと目標を決め、やっているんですけど、今自分は何をすればいいのかな?と思っています。例えば病院に行くのも、私が傍にいるとイヤがるので離れると、病院の先生も、『離れた方がいい。この子はちゃんと出来る』と。だからそういう部分で少しは自立しているのかな?と思うんですが。有難うございました」

事業所:「前田大輔さんの介護に入っている者です。大輔さんが高校2年の頃に出会ったんですけど、出会った時から自分の意志を持っていらっしゃる方でした。だから大学に進学するという話も、その頃から聞いていました。本人さんがどうなっていくのかなとは思っていますが、事業所はやっぱり第三者なので、親御さんにはなれないし、話を聴くことしか出来ないので、関係は近いんですが近付き過ぎることは出来ない。大輔さんはフランクに本音を語ってくれますけどね。今日は初めて大輔さんが人前で話をするという場面を見ましたけど、すごく前向きな内容だな、と。公衆の面前で本音を言えたのは大きいと思います」

若い当事者の本音の話に、少なからず
参加者は心を動かされました。

母親A:「息子も何かを訴えているんですけど、何なんだろう?何を言いたいのだろう?と思って。で、ヘルパーさんが、親の私が『え?!』と思う様な場所に息子を連れて行ったりしてね。私はそんなとこ無理だろうと、どうしても思い込んでいたんですけど。だから私も、ヘルパーさんがどこか連れて行ってくれることを求めたり」

事業所:「大輔さんの場合も、彼の方からいろいろリクエストがきますので、そこへ行きます。多分親は元々『行くのは難しいだろう』と思っているところへも、行きますね」


母親A:「前田さんが自分の親の話をされたのを聞いて、あ、親御さんはそういう思いなんだ、と解った様な気がします。今日は有難うございました」


当事者:「私は22歳の時に、地域で自立生活を始めました。それまで私は、いろんな人と出会いたい、いろんな経験をしたいと思っていて、ヘルパー制度を使っていろいろ外出をしたり、自立生活プログラム講座を受けたりして、自立しました」


母親A:「何か『これが大変だった』という事はありましたか?」


当事者:「それまでは、交友関係とか、親の制限が掛かってなかなか広がっていかなくて、自立をして急にいろんな人と関わらないといけなくなって、どうしたらいいんだ?というのがあったんですけど、がんばって何とかやってます」


母親A:
「1対1でのやり取りだけならまだいいですけど、グループで行動することも、自分を抑えなきゃいけない部分や、我慢しなきゃいけない部分がある事を分かるのも、必要かなって思いましたね。私ももっといろいろ活動させたいです」

前田:「大学に行ってたら、何十人という人と関わっていかないと、正直生きてはいけないので。その中で嫌な人もいます。ただ、最近気付いたんですけど、嫌な人の嫌な部分だけを見てても、ええ事ないな、と。嫌な人の中にもいいところを見付け出していかなと思って、嫌な事を言われても聴く努力をしています」

司会を挟んで、他人同士による親子対談≠フ場面も見られました。

母親B:「30歳の息子がいます。22歳の時に事故で頸椎損傷になって両足が動かなくなり、手も片手しか動きません。その息子が最近になって、一人暮らしをしたいと言い出して、でも私としては、どうやって一人暮らしが出来るんだ?と。本人は『出来る』と言って一生懸命主張してくるんですが。でも親としては、途中から怪我で障害者になってかわいそうというのがあり、私がしてあげないとっていう気持ちがすごく強いので、私が先に動いてしまうんです。ヘルパーさんも入っていて、本人の意思があるならやらせてみては?とアドバイスはくれますが・・・・・。前田さんの話を聞いて、『子どもの気持ちを第一に考えてほしい』という言葉、本当にグサッと心に矢が刺さりました。これからは本人の気持ちも大事にしていこうと思います」

司会:「ちなみにウチの理事長も中途障害で首から下が麻痺していて、電動車いすに乗って一人暮らしをしています。もしよかったら、息子さんと一緒にウチの理事長にも会われては?」

母親B:「あ〜!自立出来るんですか?でも、息子は統合失調症という病気も抱えていまして、人前に出るのがとてもしんどいと。それが一人暮らしというのはさすがに無理かな〜、と・・・・・」

司会:「でも、そういう中で自分から『自立したい』と仰ったのは、すごく大きいと思いますよ」

上田:「お母さんの心が止めてしまっている状態ですね。でも親はね、子どもが自立したいって言ってる時にさせるべき。でないと、親がガタガタになって動けなくなって、いざ子どもを自立させたいと思った時には、子どものほうも気力が後退しているから。だから子どもが『したい』って言ってきてる時に、親は涙を飲んで、一つ一つ問題を整理していって、いろいろ事業所にも相談に行ったりしてね。本人がしたいって言ってる今がチャンスよ。この機を逃すと子どもは一生自立出来なくなってしまう。いろいろ相談していけばいいんだから、させたほうがいいです」

母親B:「よく解りました。有難うございました」


今回の講演会は、昨年に開催した『障害児と親、どう向き合うの?』講演会(冒頭で少し触れましたが)の、Part.2として開催しました。
昨年の時は、参加対象を当事者の親・家族のみとしましたが、その結果、参加を希望された事業所関係者に対して、お断りせざるを得なくなりました。
その反省から、今回は親・家族のみならず、当事者自身・事業所関係者・学校関係者も参加対象とし、昨年よりも多い18名の方が参加して下さいました。

また来年度以降も、この様な講演会を開催したいと思っております。
話し手のお二方、参加者の皆さん、本当に有難うございました。



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