『障害者福祉関係機関職員専門研修会』に参加しました



2006年11月29日(土)、大阪府職員会館にて、『平成18年度、障害者福祉関係機関職員専門研修会』が開催されました。
正確には、『身体障害者及び知的障害者福祉関係機関職員に対する専門研修会』という大変長い名前の研修で、大阪府によって行われました。

大阪府内の福祉関係機関や、市町村等の身体障害者及び知的障害者福祉関係職員の、質的向上と機関同士の連携を深めることで、支援をより効果的に行うことが目的です。
今年度は特に、10月からの自立支援法本格実施に伴う、障害者福祉の現状を理解し、当事者へのより良い支援を実現していくための一助としたい、そして、3障害統合が行われたことにより、精神障害者福祉の関係職員にも参加を呼びかけた、ということです。


第一部では、『障害者自立支援法の施行について』と題した基調講演が、立命館大学産業社会学部教授の、峰島厚氏より行われました。
この中で峰島氏は、

「今年から福祉の状況が大きく変わったわけだが、恐らくもう一度大きな変革があるであろうという、情勢になっている。10月31日に、障害者15,000人が東京に集まって、『出直せ!障害者自立支援法』という集会が行われた。『出直せ』ということは、つまりは仕切り直しをせよ!ということで、自立支援法が根本的におかしいのではないかという点で、多くの障害者団体が一致した。これは、国への影響力としては非常に大きい。」

「そもそも、15,000人もの障害者が集まった集会およびデモというのは、戦後最大の規模で、全国の障害者の絶対数(人口)から考えると、例えば高齢者が10〜15万人集合したに相当する規模だ。これだけの規模でもって、『出直せ!』と言われたのだから、さすがに国も無反応ではいられなくなった。次の国会の質疑では、与野党ともこの集会の話から始まった。そして同時に、政策シンポジウムも行われて、そこでもこの問題が審議されたが、与党である公明党が出てきた。つまり、かなり政治の問題に食い込んできている。」

講演をする、峰島厚教授。思わず身を乗り出す最新情報も、あったと思います。


そして更に最新情報として、
公明党が、自立支援法凍結案を、国会に既に提出している。具体的には、応能負担に戻しなさい。それ以外のことについても、もう少し検討しようじゃないか、という、文字通り『仕切り直せ』という案を提出している。また、ふだんあまり発言をする方ではない共産党が、民主党の支援法反対案に賛成だと発言した。社民党は、独自で反対のためのプロジェクトを行うと言っている。
と、いよいよみんなの運動の成果が、政党、特に与党へも通じつつある、という状況を報告してきました。
実は、与党公明党は、当初から応益負担には反対で、これまで行われてき抗議行動にも、理解を示していた、ということです。

そのほかには、
「これまで点≠ニして散見されていた、国に対する地方自治体の要望書が、面≠ニして広がっている。朝日新聞が、『全国の主要な自治体だけでも、4割が、単独施策(利用者の負担軽減策)を実施している。』と書いていた。ちなみに朝日新聞は、元々は支援法に賛成の立場を取っていたのが、ここにきて姿勢を変えた。」
と、メディアの力にも今後、期待を持てそうな流れになっていること覗わせていました。

「そもそも支援法は、事業所側にとっても、よりよい福祉サービスを提供することが、逆に利用者により多い負担を課すことになるというジレンマに、陥らせる仕組みになっている。この法律が、名前とは裏腹に矛盾に満ちたものであることには、もうみんな気付いてきている。一部にこの法の恩恵を受けている当事者がいるのも事実だが、多くの障害者にとっては、全然自立支援になっていないという事実が、もう認知されてきている。だから、今まさに、仕切り直し待ったなしになっている。これからの動きが目が離せない。」
と、峰島氏は結び、少しは将来に希望が持てる空気が、会場内に流れたのではないか?と感じました。


会場全景。当日は約150人が参加していたという事です。


さて、第二部ではシンポジウムが行われ、シンポジストとして、わらしべ園施設長の今井亨氏、グループホーム入居者の大重文子さん、障害者総合支援センター「はる」主任の北川康太さん、花園地域生活支援センター・センター長の高取佳代さん、そして池田市障害福祉課・課長の狩野洋一さんも、行政(市町村)の立場から出席していました。

シンポジウムの中では、
「利用料負担の減免制度が複雑なのが問題。知っている人だけが得するような結果にもなりかねない。」
「デイサービスで、各利用者ごとに介護者が付いて調理実習をやっていたところ、『デイサービスは、1人で多数の利用者をケアするのが原則だから、このやり方はダメ。』と監査で引っかかった。」
「3障害統合の上での地域生活支援事業が始まったが、市町村の人(=行政)は、まだまだ精神障害というものを理解できていない。だから、こちらが必要とする支援と、行政が提示してくる支援内容が、一致していない。」
「仮に相談支援事業の評価が、いわゆる『出来高制』になった場合、今は全く無いが、ノルマが課せられないとも限らない。訪問・来所だけが実績として認められて、電話だと実績にカウントされないという話を聞いたことがある。しかしもしそうだとすると、実際にはほとんど電話による相談が多い(=外出がしんどいから)のに、どうなるのか?」
といった、様々な報告、課題が提示されました。

そして、豊中のお隣、池田市の障害福祉課の課長は、
「区分判定の基準があいまいなので、実態に沿っているのかどうか、かなり疑問だ。」
「事業者側に対する予算削減、利用者側に対する定率負担がそれぞれ発生した結果、グループ&ケアホーム開設の申請が激減した。」
「事業所は、手帳のない障害者≠ツまり、発達障害者やアスペルガー症候群などからの相談も、支援対象として受容して欲しいと言われている。」
「ホームヘルパーは、単に家事などの業務をこなすだけではなく、相談相手にもなってもらえる存在になって欲しい。」
「当事者同士においても、3障害統合に対しては、特性が大きく違う故に、支援に際して戸惑いを感じている部分がある。やはり一様に、3障害の特性を考慮せずに当事者同士が出会う事に関しては、課題が残る。」
といった報告がなされました。

行政からの、かなり踏み込んだ具体的な報告というのは、聞いていて非常に印象に残るものがあったと思います。

最新の情報も盛りだくさんの、実に有意義な研修会だったと思います。
当日のスタッフのみなさん、講師・シンポジストのみなさん、そして参加者のみなさん、お疲れさまでした。


シンポジストのみなさん。
それぞれから興味深い話を聞けました。
コーディネーターを務めたのは、第一部で
講師だった、峰島さんです。



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