2010年度 対府オールラウンド交渉に参加しました


2010年8月3日(火)と6日(金)、大阪市・北区民センターにて、対大阪府オールラウンド交渉が行われました。
主催は障大連で、大阪府下の各障害者団体から、何百人もの人が詰めかけ、切実な思いと、おさまらない怒りを訴えていました。
時間は10:00〜17:00の予定でしたが、最後は17:30まで延長しました。
都合により、CIL豊中からは、3日(火)にしか参加出来なかったのですが、ここではその当日の模様を簡単にまとめたいと思います。

障害者施策全般について:
当事者側より、「今年、大阪府の新しい財政構造改革が打ち出されたが、一昨年のPT案(財政再建プログラム試案)の後継と位置付けられており、より一層の予算削減が予想される。財政が厳しいのは先刻承知だが、これ以上障害者施策を削らないでほしい。ガイドヘルプと日常生活用具の負担軽減策については廃止という事になっているが、これによって市町村への新たな負担が起こらないようにして欲しい。」との訴えがなされました。
これに対し大阪府は、「何とか利用者負担の軽減措置を継続したい。各市町村に対しては、低所得者のガイドヘルプの自己負担も無料が望ましいとの旨を文書で要望し、その結果4月1日(1市は7月1日)から無料となった。一般上限の負担4000円については、これ以上膨らまないよう、市町村に対して働きかけてる。」との回答がなされました。

また、「大阪府は、障害者が地域で暮らす基盤を拡充してきたという歴史がある。そんな大阪の良さを、ぜひ国にも伝えてほしい。国への提言内容について、事前に障害者団体と協議をし、意見交換をしたい。」との訴えが当事者側からなされ、大阪府は、
「きちんとしたデータ・実績を収集して、必要な分析もして、国に提言していきたい。当事者・関係者の意見も募りたい。」と回答しました。


満員となった会場全景。当日はエアコンの効きも充分ではなく、暑い中、問答が繰り返されました。


障害者差別禁止条例について:
当事者側からは、「大阪府は何故条例を作れないのか?国の動向を見てというのでは消極的ではないのか。現場ではもっと問題意識を精査して、それを国へ持っていってほしい。」との訴えがなされました。
これに対し大阪府は、「ただ『差別してはいけません』という条例を作るだけだったら今すぐでも出来るが、より具体性のある、現場が混乱しない条例を作り上げていくために、逆に国の動向を見る事が必要。府としても実態調査を行う。」と回答しました。

盲ろう者のガイドヘルプ上限8時間について:
これはもう3年前の交渉でも取り上げられていた議題です。
去年の府からの回答でも、「ガイドと同種の介護なので、同様に緩和したい」と言っていたのですが、全然緩和されていません。
盲ろうの当事者からは、「
1回8時間という上限があるために、例えば、夜間に突然倒れても病院に行けない。その事は当事者をものすごく不安にさせる。また、友達が亡くなっても、通夜に行く事も出来ない。いつまでこんな悔しい思いを強いられるのか?」と、怒りの声が多数上がりました。
これに対して大阪府は、「ガイドヘルプの時間数増加のための予算確保の努力はした。しかし府の財政状況により、去年の約束を実行出来なかった。みなさんからの要望の実現に努めたいし、予算を確保したい。」と回答していました。

通院介護制度・移動支援の制限について:
「通院介護については、都道府県の地域生活支援事業の枠で振り回されてきた。単価の引き下げや時間数も厳しい。現在、居宅介護の中の一項目として認められているが、国に対して個別給付化(独立体系化)を求めていって欲しい。」との要望が先ず当事者側から出されました。

次に移動支援について、各市から参加した当事者より報告がありました。曰く、
「泉大津では、
施設入居者に対するガイドの利用が、家に帰るときにしか使えない。家に帰るだけだったら外出の内に入らないし、社会参加にもならない。」
「高槻では、移動上限の36時間がいまだに撤廃されていない。」
「八尾では、例えばパチンコや居酒屋に行くのにも、前もって行政にお伺いを立てないと行く事が出来ない。また、突発的なガイドの利用が認められていないが、お通夜はみんな突発的なものだ。」
「もっと府として、各市町村に対して指導をおこなって欲しい。各市とも支援の制限をかける方に動いているし、行き先も制限されてきている。大阪府としてガイドラインを策定するという話を聞きました。それなら、くれぐれもマイナスの内容にならない様にして欲しい。」と、みなさん口を揃えて訴えました。

これに対して大阪府は、「各市とも議論をして、現状を情報収集している。各市間のあからさまな違いは分かるから、それに対しては府としても『おかしい』と言ったりしている。各市の意見も聞いて、いろいろ調べるにしても市の許可も得ながら、進めていきたい。」と、何とも後手後手な、歯切れの悪い回答に終始しました。


緑の鉢巻きを締めているのが、盲ろうの方々です。 府の姿勢を厳しく問い正す当事者側の代表陣。


グループホームへのガイドヘルパー派遣について:
「グループホームへのガイドヘルパー派遣は絶対に無くさないで欲しい。十派一括りみたいに、一人の世話人が、全入居者の全ての面の支援を24時間やるというのでは、グループホームはミニ施設と同じになってしまう。グループホームは住まいであって施設ではない。最近、国のほうも、グループホームが住まいであるという認識が弱くなってきている。世話人とヘルパーに予算を出したら二重支給になると言われるが、ホーム内での世話人と、個々別々の外出時のガイドヘルパーというのは明らかに性質が違うものであり、従って二重にはならない。住まいという時点で、各入居者に対する個別支援が認められるのは当然であるはず。」
参加していたグループホームの入居者、運営者たちは、一様に怒りの声を上げました。
これに対して大阪府は、「みなさんからの怒りの声を重く受け止め、グループホームは住まいであるという認識のもとで、対策を講じたい。」という旨の回答をしました。


作業所の新規開設について:
各地域の当事者からは、次の様な声が上がりました。
「先の選挙で与党民主党が過半数割れをした事により、『障害者総合福祉法』の成立時期は、当初より延期される結果となった。大阪府は、もともとの(選挙前の)新法成立の時期(平成23年度)を目処に、作業所の新規開設は認めなくする、つまり、国の定める新類型に移行させる方向でいるとの事だが、国の動きがこうなった以上、実際に新法(総合福祉法)が成立するまで(平成25年度の予定)、作業所の新規開設を認めてほしい。そうでないと、現状、新しい類型では、最低でも10人規模(の作業所)とする事が必要であり、いきなり10人規模での開設は無理だ。」

これに対して大阪府は、「国の新制度に向けて、個々のサービスの在り方論が出るだろうから、その中で府としても注視し、抜本的な改革がなされていないようなら提言していきたい。」と回答しましたが、昔に比べて、府の地域移行に対する姿勢が後退しているように見える印象は、否めなかったと思います。

施設内での人権侵害について:
入所施設については、長年にわたり、その密室性と隔離性ゆえの人権侵害が行われてきました。
現在、大阪府下では新たに2ヵ所の大規模入所施設を造る計画があるという事でしたが、これに対して当事者勢からは一斉に抗議の声が上がりました。
「これからは施設ではなく、地域移行であるということは、先の第三次大阪府障害者計画でも書かれている。
施設の長期入所自体が人権侵害にあたるという認識を持って、次の第四次大阪府障害者計画ではその事を明記せよ!そして施設を少しでも風通しをよくするために、施設内へのガイドヘルパー派遣を認めるなど、もっと外からの風が入りやすいような環境にすべきだ。」
これに対して大阪府は、施設内での人権侵害が無いかどうか、監査をおこなってきた」と回答しましたが、当事者の側からは、
「監査をしていたのであれば、何故人権侵害の事実を発見できなかったのか?不十分だったのではないのか?」と問い正し、大阪府は、「毎年監査に行く事は出来なかった」と弁解していました。


参加者からは、過去にも増して積極的な挙手がありました。


このほか、精神障害者の退院促進について、大阪府の新しい財政構造改革の中に組み込んだら、『効率的に大量退院させればいい』という様な考え方に傾いてしまわないか不安だ、という声や、相談支援事業について、「年間予算が700万円のところもある。各市町村の予算の実態を把握し、必要なら補てんしてほしい!」という声が聞かれました。

最後に、介護・グループホーム・日中活動・相談支援等々の権限は、この先、指定指導のもと、市町村に移譲されることになっています。それにあたり、府としての指導の内容がマニュアルとしてまとめられたという事なので、当事者としては、それを事前に当事者に示し、協議する場を設けて欲しいところです。
また、今回も全般的に、府は国や市町村の動きを待つという姿勢になり過ぎていました。
あまり性急にならずに慎重さも持つという事は必要だと思いますが、それにしても、府としても、もっと堂々と具体的な政策を打ち出し、府の力で何か出来る事はないのか、能動的に考えるべきだと強く感じました。
毎回こういう感想になってしまう気が、しないでもないですが(汗)・・・・・。


今回の会場は2階で、エレベーターが1つしか
無いために、入退場には相当時間を要しました。
大阪府の方々




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