2007年度、全国自立生活センター協議会 所長セミナーに参加しました


2008年2月18日から20日まで、千里中央のライフサイエンスビルにて、全国自立生活センター協議会主催の所長セミナーが開催されました。
このセミナーは、全国の、自立生活センターやヘルパー派遣事業所の責任者、および職員を対象として行われたもので、
今の時代を生きる障害者が、次の代に何を伝えていき、何を遺していく事が出来るのか、そしてこれからの時代の、障害者のリーダーはどうあるべきか?というのがテーマでした。

初日は午前中に、福島県福祉のまちづくりの会、鈴木絹江さんより、『権利とは何か?人権とは何か?』について講演が行われました。
鈴木さんは具体的な事例をあげながら、昔の差別の状況と今の状況、またバリアフリーの考え方が打ち出されている今の時代における、自立支援法の差別性や抑圧、教育や日常生活などについて語られました。

午後からは、神戸リングリングの中尾悦子さん、CIL日野の秋山浩子さん、ヒューマンケア協会の塚田芳昭さんを講師として、ピアカウンセリングについて話し合いが行われました。
ピアカン本来の目的である、『障害者が持ってる抑圧や差別感を取り払うことでエンパワメントし自立生活への布石を作る。』『ピアカンを行う時には公平さを重要とし、その空間を共有しあうことが重要。』と、自立支援の中での、ILPとピアカンの関係などについて掘り下げた説明をうけ、この手法として一対一で行うセッションや6人程度のグループで行うディスカッションを行いました。
参加者からは、『ピアカウンセリングに対する疑問や、目的がよく分からない。また、ピアカウンセリングには、なぜ健常者が入れないのか?』などの疑問が出されました。

一方、同時に別の部屋で、弁護士の東俊裕さんから、権利擁護について講演がなされました。
東さんは国連で障害者権利条約を作成していた時に日本政府の代表の一員として関わっていたこともあって、
「条約がようやくできたのだから、日本でも同意した上で、障害者の権利を守る法律が必要だということを当事者が中心となって社会に声を上げていき、作っていかなければならない」と述べていました。
また、講演の中ではスライドを使い、これまで障害者が受けてきた差別事例を写真で示していました。1970年代まであったアメリカの大規模入所施設の実情を隠し撮りしたその写真には、12月の寒さの中での施設内の悲惨な状況が写されていました。コンクリート敷きの床の上で裸足や裸で普通に生活を送っている様子や、排泄物が床に垂れ流されている状態等、どれも目を背けたくなる程のものでした。
この事がアメリカ全土に知り渡ったことで運動が巻き起こり、やがてADA(障害を持つアメリカ人法)の制定に繋がっていったのですが、
「日本でもまだ入所を余儀なくされている障害者がたくさんいる。これからは権利擁護を謳った、より明確な法律を作っていかなければならない。障害者が地域で暮らす中で、何か不利益な事が、例えばスムーズに移動が出来ないという事が起こった場合、それは本人の障害が悪いのではなく、社会の『合理的配慮』が欠けているのが悪いのだ!」と訴えていました。


鈴木絹江さん 東(ひがし)俊裕さん
ピアカウンセリングのディスカッションのようす 初日の会場のようす


2日目は午前中に、元町田ヒューマンネットワーク職員の、近藤秀夫さんより、自立生活運動と、リーダーの在り方について講演が行われました。

障害者団体のリーダーたるもの、自分の事で精一杯になっていてはいけないのだ。昔の時代の、血のにじむような運動の上に、現在の生活がある。
もともと障害者は、人間として当たり前に生きる権利すら、与えられていなかった。親が障害を持った我が子を殺しても、『仕方がない』と思われるぐらいであった。それを、最初は世間から冷たい風を浴びながらも、道に座り込みながら、めげずに当事者が運動をしてきた。
1977年に、川崎のバスターミナルで『バス乗っ取り事件』と言われる事件があったが、あれも本当は『乗っ取った』のではない。障害者がふつうにバスに乗っていて、発車する時になって運転士が、障害者の乗客に対して乗車拒否をしてきた。これに怒った障害者が、『障害者だってバスに乗る権利はある。乗せて下さい。』と直訴。それでも運転士がバスを発車させようとしなかったため、ほかの、健常者の乗客が全員降りてしまい、その結果、車内に障害者だけが残った。その状況をマスコミが、『乗っ取り』と表現した。

このような歴史がある事を踏まえて、今を生きる障害者のリーダーは、後世に何を遺せるかを考えなくてはならない。でも、今はみんなNPO法人格を取り、それは良いのだが、かえって自分の事業の事だけで汲々とするようになっている。行政から委託事業を受けるようになったはいいが、結果的に行政の顔色ばかりをうかがっているのは、見ていて切ない気もする。昔はもっとのびのび自由に活動していたものだけど。」

近藤さんは、アメリカ人の障害者で、車いすバスケットをやっていた、ジャスティン・ダートという人の、『障害はパワーだ』という言葉にいたく感銘を受け、『今まで障害はマイナスのものと決め込んでいた。これからは自分も、障害をプラス要素に換えて、生きていこう。』と決意されたそうです。

午後からは樋口恵子さんより、『職員間の信頼関係』についての講演と、ロールプレイが行われました。

「みなさんにとって、障害者、健常者とは何でしょうか?
お互い、相手のことを思いやりながら仕事をしていますか?障害者職員と健常者職員の間での信頼関係は、築けていますか?

障害者の職員は、健常者職員に辞められるのが嫌で、遠慮していませんか?健常者の方が仕事も速いし、言葉も速いので、ついつい黙ってしまってはいませんか?代表だからというプレッシャーから、知らないことを知っているふりをしている事、無いですか?知らない事を知らないと言う権利はあるのです。
健常者職員は、障害者から『当事者主体だから意見を言うな!』と言われて、意欲を失った事はありませんか?多くの業務に追われ、パニックになるほど忙しいのに、障害者職員から『5時になったから、早くリフト(車)を出してよ。しんどいから帰りたい。』と急に言われ、『もう少しだけ待って』と言うと、『あなたは当事者じゃないから、障害者のしんどさが分からないのだ!』と非難された事は無いですか?
介護コーディネーターは、障害者の上司と健常者のスタッフの板挟みになって、疲れる事はありませんか?例え現実的に無理な状況でも、理念だけを一方的に言われて苦しい事は、ありませんか?

障害者にも健常者にも、出来ないことは出来ないと断る権利があるのです。『イエス』『ノー』を自分で言う権利、分からないことを分からないと言う権利、悩みの種を全て自分の責任にしなくても良い権利、周囲の人から認められることを当てにしないで人と接する権利、などです。」

最後に行われたロールプレイでは、みんな迫真の演技で会場を沸かせました。
お互い、任せ過ぎない事と無理をし過ぎない事一方的に自分の要求だけを言い過ぎない態度と一人で抱え過ぎない態度、そして労る気持ちと自分の仕事に対してしっかりする気持ち、これらの事が必要なのだと、改めて仕事の基礎を学んだと感じました。


近藤秀夫さん 樋口恵子さん
ロールプレイのようす 2日目の会場のようす


3日目は、午前中に自立生活夢宙センター平下耕三さんと松倉建次さんより、「介助派遣のあり方を見直す」と題した講演が行われました。

「介助者は自分達が自立生活をしている人、もしくは、目指している人の生活のうちに入る。利用者と介助者の関係が悪くなる原因は、「噂や悪口」これが膨れると介助者が潰れる。利用者の生活に影響をきたす。介助者同士の連携が崩れる。事業所の理念が崩れる。自立生活センターの相談支援と介助派遣は両輪の形でないといけない。孤立しないで仲間意識を持ち、強く、優しく、楽しくするものである。」
という提起がありました。

午後からは、八王子精神障害者ピアサポートセンターの田島裕美さんと神戸リングリングの船橋裕晶さんより、精神障害について講演がありました。

「『精神障害者は怖い』という偏見や差別が今でも日常的にある。もしかしたら、私達もそういったことを持っているかもしれない。」
精神障害者の現状、精神障害者の特徴、精神障害者を取り巻く歴史的な背景、精神障害者に関わるヘルパーの心得、ヘルパーへのお願い等が話され、精神障害者を取り巻いてる、偏見と差別が再認識されました。


今回の研修を通して、再度、自分が関わってきた活動の歴史や経過を考える事が出来ました。と同時に、日頃仕事や活動に流されていって、振り返りが出来ていないのではないかと、見つめ直しました。
健常者職員と当事者職員の関係については、CILにとってどういう形が良いのか、当事者性をどうだすべきなのかを考えるようになり、こうした事はこれからも続いていくものだと思います。

全国各地から参加されたみなさん、お疲れさまでした。



戻る