2008(平成20)年度の、『大阪府高次脳機能障がい地域支援ネットワーク全体会議』が、7月30日に開催され、CIL豊中から1名が参加しました。
これは大阪府高次脳機能障がい支援普及事業の一環として行われているもので、主催は、大阪府障がい者自立相談支援センターです。
まず第一部では、障がい者医療・リハビリテーションセンターより、支援ネットワーク構築に向けての取り組みが報告されました。
大阪府では、2001年度より5年間にわたって、高次脳機能障害支援モデル事業が実施され、この障害における診断と支援をどのようにすれば良いか、試行がなされてきました。
その実績を受けて国からも施策が打ち出され、2012(平成24)年度までに、全都道府県に、高次脳機能障害支援拠点を置くという目標が、設定されたという事です。
現時点で、既にほとんどの都道府県において、支援拠点は置かれているという事で、大阪府の場合は、『障害者医療・リハビリテーションセンター』がその対象です。
そのあとは、高次脳機能障害支援普及事業の概要が、イメージ図を使って説明されました。
以下にそのイメージ図を、少々写りが悪いですが、掲載します。
第二部では、大阪府内の各機関から、『地域ネットワークに向けての一言メッセージ』と題して、現状の報告や、今後へ向けての意見がなされました。
合計9ヶ所の機関から発表があったのですが、それぞれ社会生活への適応や、自発性の促進、就労継続に向けての取り組みをおこなっているという事でした。そして、感情のコントロールや、学童期の子どもが当事者の場合の対応に、苦労が伴っているようです。
一番多い相談内容は復職に関するもので、本人や家族のみならず、企業からの相談も増えてきています。
今後の課題として、『医療機関との連携がより一層必要である』、『家族がしんどくなっているケースの支援策が重要である』という意見も出ていました。
また、当事者本人が、自分が障害を負っていることを自覚していない場合も少なくはなく、あくまでも就労復帰(=結果として、障害を負う前の状況の再現)を主張されることや、『何故自分には福祉サービスが必要なのか?』と、本人から問われることもあるそうです。
豊中からは、中途障害者のための授産施設を運営している、工房羅針盤の山河さんが報告をされ、『一つの機関の力だけでは正直ムリがある。医療機関など、まわりの機関との連携が必要』、『家族の方への支援が不足している』、『まだまだ知られていないが故に、利用出来る福祉サービスや、支援のための研修の機会が不足している』といった発言をされていました。
このほか、『今から思えば、高次脳機能障害だったのだろうと言える人が、支援の対象者だった時期が過去にあった』という話や、『身体に障害が無いという理由で、何の障害とも認定しないまま対応していた』という話も聞かれ、この障害が、まだまだ新くて認識が行き届いていなかったという実態が、窺えました。
最近は特に、若い年齢層の当事者(認定される人)が増えてきているという事です。
なお、大阪障害者職業センターの方より、『高次脳機能障害の方への就労支援マニュアル』の紹介がありました。
また、おおさか脳損傷者サポートセンターの理事長より、『医療・専門職とは違った立場で、当事者間のピアサポートの場や、家族のピアサポートとして、このネットワークに参画したい。今年度中に、家族や支援者向けの小さな研究会を、何度かに分けて開きたい。ピアサポーターの養成や、当事者のピアカウンセリングも行いたい。』という話がありました。
高次脳機能障害は、現在でも手帳の対象にはなっておらず、また診断の基準も、なかなか難しいものがあります。
ことに労災保険などが関連してくると、診断(判定)基準が非常に厳しいという事です。
外見上、意識障害などが無いという理由で、診断されない人もおられ、何とかして、そういう人(=狭間に置かれた人)を救済したいと、医療関係の方も言っていました。
これからも、地域ネットワークがより充実して、救われる人が少しでも増えて欲しいと思います。
障がい者医療・リハビリテーション センターの、鈴木恒彦さん |
会場全景。約200名が参加していました。 | 豊中からの発言をされていた、 工房羅針盤の山河正裕さん |