国障年第25回総会シンポジウム報告
〜“障害者の生活をどー思てんねん”〜




2005年5月21日、障害福祉センターひまわり体育室にて、国障年(国際障害者年を機に、「障害」者の自立と完全参加をめざす豊中市民会議)の、第25回総会が執り行われました。
今年は、国障年発足から25周年にあたるということで、それを記念して、何かイベントを企画したいという案が発表されました。
また、各団体の枠を取り払って、加盟団体のスタッフ全員の共通認識のもと、障害者のニーズに沿った事業を、役割分担していく事が望ましく、そのために今年4月から、加盟団体のスタッフ全員で行う拡大会議をおこなって、制度の動きなどの学習会を行っているという取り組みが報告されました。さらに、各スタッフ同士が、お互いにもっと知り合って交流を深めるべく、土曜日に交流会をおこなっているという事も報告されました。


さて、総会第二部では、『障害者の生活をどー思てんねん』と題したシンポジウムが行われました。
このシンポジウムでは、国障年の代表である大谷強氏の進行のもと、5名のパネリストの方がスピーチをされました。
パネリストとなったのは、東大阪市自立支援センターぱあとなあの地村貴士さん、であいの郷の石原朋和さん、豊中のサポートネットワークの石倉優子さん、当団体のま〜たれ(潮村雅子)さん、豊中市教職員組合の青柳隆さん、そし共同連(共同体全国連合)の羽田(はた)明史さんです。


司会進行を勤められた、国障年代表の大谷さん(右側)
左側は総会全体の総合司会の、井上康さん
理路整然、明解にスピーチされた、地村さん


はじめに地村貴士さんが、
「日頃から障害者が求めているサービスというのは、決して贅沢なものではなく、最低限の生活を営む上で当たり前に必要なことである。これから豊中の方にやっていただきたいことは、制度に関する国の動きを注意深く見守り、自分たちが生活する地域の行政に対して、サービスの質を落とさないようにするだけでなく、市町村の立場からも国に積極的に訴えていくよう、働きかけていくことである。市民と市行政がチームワークを組んで、国を相手に訴えていく姿勢を持つことが、今後は必要になる。常に情報に目を光らせ、豊中市の中で連携を組んでいかなければならない」
と呼びかけました。
これからますます厳しい状況になっていくのが予想される中、当の市民だけでなく、行政にも、さらなる情報収集と国への行動を求めなければならない、ということが、大変よく伝わったと思います。


であいの郷の石原さん サポートネットワーク(サポネ)の石倉優子さん 当団体のま〜たれさん


続いて石原朋和さんが、障害者自立支援法が通ると困ることとして、
「支給時間数が少なくなる」、「障害者の所得や年金の問題(=応益負担になる)」、「実家と自分の家での生活ということ(=個人負担から世帯負担に変わる)」、「制度の早過ぎる改革」、「我々、障害者の気持ち(=当事者抜きで、勝手に法案が作られる)」、「国の税金(=財政が苦しい、というのがいつでもまかり通るのか?)」
の6点を挙げていました。

次に石倉優子さんが、
「2000年6月より、『障害者の自立を支えるサポートネットワーク(サポネ)』の代表になり、2003年12月15日に、両親と離れて24時間介護者を付けての自立生活を開始した。
 事業所としてサポネが苦労していることは、
 @現在の支援費制度でも時間は足りず、制度外の独自のルールを作って生活を支えている。介護や食事・トイレなど、当たり前の生活をするのに必要なサービスは、権利として認められるべきだ。
 A入院中の人の介護では、医療的ケア、外出のサポートから、体調・精神面など全てを支えないといけないし、利用者から求められることもある。入院中は制度が使えない。
 B夜勤の介護(入浴・夜間の外出・泊まり)を確保するのは、むずかしい。」
という実態報告をしました。

次にま〜たれさんが、まずは自身の障害について、
「自分は中途障害で、手帳を取ったのも2年前である。もともと体が弱く、そんな自分に対して、『なんとか健常者に追いつこう』と思っていた。そんな中、交通事故に遭い下肢機能が落ちたのだが、そのときも、『落ちた機能を元に戻さなくては・・・』とばかり思って頑張っていた。そんな時、ピア・カウンセリング講座を受ける機会があり、『ああ、自分はもうこの体のままでもいいんだ。このままの体で生きよう!』と思うようになった。」
と語りました。そして事業所の取り組みとして、
「CIL豊中では、障害のある人同士、お互い話したり聞いたりし、お互いに分かり合えたり、勇気をもらったりしながら、道を作るのではなく、一緒に考え探しながらその人のペースでその人のニーズに進む。当事者が主体となっているため、出来る事業が二つある。一つがピア・カウンセリング、もう一つが自立生活プログラム講座(ILP)である。自立生活プログラム講座は、先輩の体験談や助言を聞きながらいろいろ体験してみることことで、将来に向けてのイメージを描けるようになる。さらに、なかなか講座の中ではやり尽くせなかったり、講座というカタい雰囲気ではなく、リラックスした場で『ただしゃべってみよう』というもので、日頃なかなか友達を作る機会が少ないし、友達を作ることで、いろいろな悩みや思いを共有出来、お互い打ち解けた関係を作れ、エンパワメントしていき、その中で何か新たな発見ができないかな?って思い描きながら、パンサークルだったり、おしゃべりサロンなどにつないでいる。
 日頃、講座を開いてもなかなか人が集まらないが、本当に帰るときの顔がステキな笑顔に・・・。ぜひ講座参加して下さい。家族の方を参加させてあげてください。事務所にもどんどん来て下さい。」
と呼びかけていました。


豊中市教職員組合の青柳さん 共同体全国連合(共同連)の
羽田(はた)さん


そのあと青柳さんが、教職員の立場から、
「子どもの内から障害者と出会う機会をもち、同じ教室で障害者と共に過ごすことで、障害者を日常の存在と感じられるようになる。街中で障害者を見かけることが、以前に比べると増えてきたのはいいこと」
と述べていました。
豊中でおこなわれている統合教育は、子どもが障害者と地域で接することが当たり前だという感覚をもつようになるために、大変効果的な役割を果たしているのではないかと思います。

最後となった羽田さんは、就労という立場から話をされ、
「障害者の就労というと、雇う側の立場である企業が、自信が持てないと言って躊躇する場合が多い。企業の人たちが、障害者に対する偏見や不安をなくし、彼らの能力に触れることが一番望ましい。また作業所なども、どちらかというと、そこで働く健常者(職員)の身分を安定させるための存在という実態もあったが、障害者自身の就労→経済的自立の確立こそが重要だ」
と述べました。羽田さんは、所属している名古屋の『わっぱの会』についても紹介をされました。
わっぱの会は1971年に、脱隔離施設→地域での共同体確立という目標をかかげて誕生し、約35年の歴史があります。就労支援としての能力開発職業施設や、働きの場としての知的障害者通所授産施設があります。


シンポジウムの全景 総会の題目の垂れ幕


以上、さまざまな角度からのスピーチがなされました。
障害者自立支援法案が成立されようとしている中、これから豊中市内の各当事者団体が一段と連携を強めなくてはならないという空気が、ひしひしと伝わってきたと思います。
それと同時に、今ある地域生活をさらに充実させていくために、各事業所に出来ることや、秘められた可能性もたくさんあるのだな、と感じた次第です。


会場のようす


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