2014年4月2日(水)、13:30〜15:45まで、高槻市立生涯学習センターにて、講演【自閉症の人と共にあゆむ】が行われ、参加してきました。
これは、『世界自閉症啓発デー高槻実行委員会』が主催で行われたもので、高槻市と高槻市教育委員会が共催です。
自閉症や発達障害の社会への啓発と、正しい理解を呼びかけることが目的で、開催されました。
司会を務めた内の1人は発達障害当事者の大学生で、自己紹介の中で、自らを高機能自閉症であると言っていました。そして、「講義を聞きながら同時にノートを取るなど、一度に2つのことをすることが出来ず、アイパッドを使うことで対処している」と語ったほか、『自閉症の中で、IQ(知能指数)の値が、知的障害とのボーダーである70を越えていたら高機能』と、具体的な説明もしていました。
続いて挨拶に立った主催者の人は、「“人付き合いが悪い”、“空気が読めない”といった、発達障害の特徴のごく一部だけが一人歩きをしてしまい、意志の疎通が噛み合わなかったり、マイペースな行動に走る人を、“発達障害か!”と一括りにされるのが大変悲しい。当事者一人一人の抱える困難は、本当にさまざま」と述べていました。
講師を務めたのは、『大阪府発達障がい者支援センター アクトおおさか』のセンター長、堀内桂氏です。
以下講演の内容を抜粋します。
■ | 自閉症をもう少し広く言うと、広汎性発達障害となる。 |
■ | 言葉をその言葉どおりに受け止める。例えば「100円玉を10円玉と交換して下さい」と言われると、実際には両替を意味していても、そのようには伝わらず、10円玉1枚だけと交換しようとする。 |
■ | 多くのことに興味を持つよりは、自分がよく知っている特定のことに興味を持っている。 |
■ | たくさんの情報が一度に入ってくると、どこへ注意を向けていいか混乱しやすい。初めに入った情報だけに注意が向き、途中で切り替えるのが苦手。 |
■ | 言葉よりは絵で伝えたほうが解りやすい。話し言葉は飽くまでも参考程度として扱われる。 |
■ | 決して脳が動いていないわけではないが、反応がちょっと遅いので、いざ反応した時には、もう場面が変わっている。また、人の気持ちが解らないわけではないが、自然に伝わらないのでちゃんと伝える手助けが必要。 |
■ | コミュニケーションとは、一人だけではなくて、誰かとやり取りすることだから、これまでは『コミュニケーション』と『社会性』は別々の問題として診断(自閉症・発達障害の)されてきたが、次の診断基準改訂では、これを一つの組にする。同じく、『こだわり・反復行動』と『感覚の問題』も一つの組にする。なお、診断名も、『自閉症』から『自閉スペクトラム症』に変わるかも知れない。 |
■ | 今までは(私の時も含めて)、幼少時の特徴が分からないと、正確な診断は出来ないとされてきた。しかしそれだと、既に両親が他界している場合や、幼少時に一人で(孤児の状態で)暮らしてきた人は、永遠に診断がつかず、必要なサービスも受けられないので、これからは『大人になってから分かることもある』という条文(診断の根拠)が入ると思う。 |
■ | 自閉症は『障害』と言われるが、決して脳が機能していないわけではない。寧ろ機能し過ぎているかも知れない。その証拠に、特別な才能を発揮して、社会の中で役割を果たしている人、人類の進化に寄与している人もいる。障害者と呼ぶよりは、『神経学的少数派』と呼んだ方がふさわしい。 |
■ | 障害そのものの早期発見にこだわるより、肝心なのは、その時その時に本人に『正しく情報が伝わらない』時間を短くすること。いつまでも何を伝えられているのか分からないと、「自分はもう、ダメな人間なんだ。出来ない人間なんだ」と思い、自尊感情が育たなくなる。 |
★突出風景仮説(自閉症スペクトラムの人の記憶のメカニズム)
突出したエピソード(風景的)記憶が、行動に強く影響する。
★自閉症スペクトラムの人への合理的配慮とは?
□ 創造の苦手を補う工夫(特に予期不安を軽減することが重要)
□ 話言葉の苦手を補う工夫
□ 対人関係(人の心のうちを察する)の苦手を補う工夫
□ 間隔(距離感)の問題を避ける工夫
□ 他の障害に対する配慮や工夫も大いに役立つ
★自閉症スペクトラムの人へ個別支援計画(工夫)は、的確なアセスメント(定型・非定型)から
□ 突出した記憶の世界に住んでいる人なので、何気ない行動でも、場所や相手が変われば、自分がよく知った方法でないと進められないことがあります。
□ 何の援助もなしに観察して、今どんな方法を記憶しているのかを詳細に調べておくと、援助の組み立てがうまくいくことが多い。
★自閉症スペクトラムの人を支援する際の4つのコツ
●支援者間で援助の方法を具体的な点まで統一する。
●一度に多くの援助目標をつくらない(必要度・緊急度によって的を絞る)。
●目標が達成できて定着してから、次の段階へ移る。
●混乱したら、混乱していなかった段階へ戻る。
堀内さんは、「自閉症の人は、対人関係が苦手だと言われますが、対人関係に興味がないのではなく、敏感に察知し過ぎるのです。だから、刺激されてしまうから不快になるだけで、どのように振る舞ったらいいか解れば、普通に(会話などに)参加出来ます」、また、「行動障害を起こした時の対策を立てるのはいいが、行動障害を起こさせない(つまり、過度にストレスを与えない)配慮や支援も必要です」と述べていました。
後半はミニパネルディスカッションが行われました。
この中で高槻市社会福祉協議会 コミュニティーソーシャルワーカーの木村さんは、「人と地域、人とサービスがつながることが大切だが、今のサービスはほとんどが、自ら申請をして初めて受給出来るシステムになっている。ずっと引きこもっていたり、社会参加が少なかった人にとっては、『つながる』というのはすごくハードルが高いことだ」と話していました。
『申請主義』だと、サービスの存在そのものを知らない、それをどのように届けるかというところからの問題になります。
高槻市子育て支援センターの柏田さんは、「一人一人に合った支援は絶対にしていかなければならないが、例えば本人が『一人でいるのが好きだ』と言ったからといって、『じゃあ、一人でいたらええわ』となるのかというと、それは違うと思う。最初は一人でいても、担当者との関わりから始まり、その中で人とのコミュニケーションをどうやって取れるようにしていくのか?行動面もそうだが、支援の大切さということで、高槻市では昨年度から委託事業として、巡回支援専門員整備事業というのを実施している。これは、早期発見・早期療育ということで、早い内から児童の課題を見付け、適切なサービスにつなげるのが目的」と述べていました。
先程講演された堀内さんは、「ウチは看板は【発達障がい者支援センター】だが、別に発達障害が無くても、相談は受け付ける。というのも、発達障害というのは“正常の連続体”と言われている。グレーゾーンという言葉が使われたりもするが、障害と判定されているか?されていないか?よりも、本人さん自身の状況を見て、物事の捉え方に特徴があるのなら、『こういう風に対応してみましょう』、『こういう伝え方をすると本人は解りやすいですよ』とアドバイスするようにしている。精神科療育の相談支援事業者の方が、退院促進に向けての一環として、たくさん相談に来られる」と話していました。
司会をした、社会福祉法人北摂杉の子会の松上さんは、「自閉症(特に知的障害を伴わない高機能自閉症)は、目には見えない障害だから、なかなか解らない。そこが非常にネックとなってしまうということで、専門職の人による、当事者本人の特性に基づいた支援が、専門機関の中で適切に行われていない。その結果として、本人たちに、行動的な問題が現れてしまっているという現実がある」と報告していました。
今回は、自閉症を含めた発達障害について知識を増やしたいという目的から、自らも当事者と認定された筆者が参加してきました。
まだまだ特徴に関する知識も学習途上ですが、「単に特徴を理解することだけが目的になってはいけない」という認識も、今回、新たに持つことが出来たと思います。
この先、障害者・障害児に対する計画相談支援が進んでいく中でも、発達障害者への支援のやり方を模索する場面は、出てくると思います。
筆者は、発達障害当事者であると同時に相談支援専門員でもあるので、両方の立場から、この障害に対する理解を一層深めていくことを、目標としたいです。