2004年7月9日、阪急バス株式会社において、車いす使用の乗客が乗り降りする際の運転士の乗客に対する扱い方・および車内各装置の取り扱い方を、各運転士に研修するための教材ビデオの撮影が行われました。
撮影にあたっては、実際に車いすを使用している人がモデルになる必要があることから、当団体の電動車いす使用の職員が協力しました。
当日は大変厳しい酷暑の中、大変熱心に、色々細かなところにまで気を遣いながら撮影されていました。
以下にそのようすをレポート致します。
写真1:先ず初めに本社車庫内にて、ノンステップバスのスロープのセッティングが行われました。このバスの場合は、車内に渡し板が備え付けられており、この型が今後の標準になるということです。これまではさまざまな種類のノンステップバスが導入され、スロープも、車両から直接引き出されるタイプの物が多く見られていました。
写真2:渡し板を設置した状態です。この時、バスはニーリング(Kneeling=車体全体を歩道方向に傾けて、地面との高さの差を少しでも少なくすること)をしている状態でした。ニーリングをしないままだと、渡し板を設置したときの傾斜はかなり急になり、車いすの人の中には怖いと感じる人もいます。
写真3:電動車いすの人が車内に入るところです。この渡し板は、色や形は電車の駅ホームと車内との間に敷く物とよく似ておりますが、取り付け方法に若干の違いがあり(これについては後述)、またバス用ということで、幅はかなり狭めになっています。電動車いすに乗っていてまだ運転が慣れていない人だと、少々幅がギリギリ過ぎて怖いと感じる人もいると思われます。
写真1 | 写真2 | 写真3 |
写真4:撮影風景。この時は三脚を立てて行われていました。
写真5:渡し板の、車両部分設置方法。ご覧のように、車両の側に差し込み口があります。そして板からは金具が差し出る格好になっており、この金具を差し込み口にはめこみます。
写真6:写真5を撮影後、金具をはめこんだ状態です。こうすれば板が安全に固定されます。
写真4 | 写真5 | 写真6 |
写真7:車内にて、車いすを固定させる。丁度車いす固定位置に付いている座席は、背もたれを倒して横にたたむことが出来ます。そしてたたんだ席(この席自体は固定されているから安全)と車いすとの間に、ベルトを巻いて固定します。
写真8:車いすの後輪部分。バスの急停車急発進のショック、または雨で床がぬれていることが原因で車いすが勝手に動かないよう、前後を車止めで固定させ、なおかつ左右の後輪の間をベルト(赤色の物)で固定させます。しかし電動車いすは、電源を切ればあとはじっと固定されているため、このベルトについてはまかなくても大丈夫な場合があります。
写真9:モデル役の人が手でつかんでいるのは、上半身を固定させるベルトです。これも必要かどうかは、利用者の方の意志を確かめてからやるようにします。特に利用者が女性の場合は、介護者が横にいる場合はその人にやってもらうのがベターです(運転士が女性の場合は別)。
写真7 | 写真8 | 写真9 |
写真10:ここからは、実際のバス停を使って撮影が行われました。使用された停留所は千成小学校前です。この時は、バス停に到着して、車いすの人が待っているという想定で行われたため、モデル役の車いす職員は最初バス停で待機(=写真11)。そしてバスが到着して、最初に運転士が乗客に、「車いすの方が乗られます。しばらくお待ち願います」とアナウンスをする場面から撮影が始まりました。
写真12:停留所にバスが到着し、渡し板を敷いて車いすの乗客が乗る場面の撮影です。
写真10 | 写真11 | 写真12 |
写真13:渡し板のセッティングの説明。まだまだ正しい使い方を知らない運転士が多い状況だけに、早くこのビデオが広められることを期待したいと思います。この時は猛烈な暑さで、日陰もなく、またバスもアイドリングストップをしていたため冷房が付いていない状態だったのですが、みなさん熱心に取り組んでおられました。
写真14:車いすの人が乗った後、各装置のセッティングの説明、そして車いすの乗客に対する物の訊き方、言葉の選び方について、細かく話をされていました。
写真15:発車する際、他の乗客に対して、「お待たせ致しました。ご協力有難うございました」とアナウンスする場面です。
写真13 | 写真14 | 写真15 |
写真16〜18:さて、改めて別撮りで、渡し板使用後の収納のしかたを説明されていました。この渡し板は、所定の位置に正確に戻さないと、安全上入口のドアが閉まらない仕組みになっているようです。そのため、セッティングのしかた同様、収納のしかたについても、各運転士に十分知っていただければと思います。
写真16 | 写真17 | 写真18 |
3.蛍池バス停にて
千成小学校前バス停で、一通りの行程を撮影して、今回のビデオ撮影は終わりました。さて、今回はCIL豊中から職員が2名(内1人が障害当事者)協力したわけですが、私たちの事務所は蛍池駅前にあり、帰りは阪急バス会社のご厚意で、撮影用のノンステップバスでそのまま蛍池まで送迎していだだきました。大変有難かったですが、最後に蛍池でもう一度、車いすの乗客が降りる際のやり方について撮影が行われました(=写真19、20)。
写真19 | 写真20 |
以上、阪急バス運転士研修用ビデオの、撮影協力のレポートをお届けしました。
当日は厳しい暑さの中を、各社員の方々、汗びっしょりになって撮影に励んでおられました。
少しでも当事者の状況を正確に知ろうと、モデル役の職員にいろいろ細かい質問もされ、その都度返ってくる答えに熱心に耳を傾けている姿は、とても印象に残ったと思います。
早くこのビデオの内容が全運転士に行き届いて、車いすに乗った人がいつでも安全かつスムースにバスに乗れるようになって欲しいと思いました。
また、今後もこのようなビデオ撮影の際には、是非とも協力させて頂きたいと思います。
当日撮影に参加された社員の方々、そしてモデル役となった職員さん、どうもお疲れさまでした。