障害者生活支援センター部会に参加しました



2005年11月16日、大阪府立文化情報センター、さいかくホールにて、『平成17年度 大阪身体障害者地域リハビリテーション協議会 障害者生活支援センター部会』が開催されました。
これは、大阪府下の、障害者生活支援事業をおこなっている団体が一同に会し、お互い共通の認識と情報を持ち合おうというものです。

今回は、去る10月31日に国会で成立した、障害者自立支援法を睨んで、今後、生活支援事業の位置付けはどうなり、生活支援センターの仕事はどう変わっていくのかということを、3人のパネリストが講義をしました。


会場風景。終始厳しい内容の話で、場内は沈痛な空気に包まれていました。



1.障害程度区分について 〜試行事業からみえた課題〜
     パーソナルサポートひらかた、コーディネーターの長尾祥司さん

長尾さんからは、自立支援法のもとで行われる程度区分について、聞き取りをする調査員に対する研修を、枚方で試行されたという報告がありました。
現在の支援費制度が始まる際にも、行政(市役所)からの聞き取りがなされましたが、調査員は十分に障害者の生活実態や制度そのものについて理解しているとは言えず、的外れな質問をしたり、調査員によってレベルに大きく差があるといった現象が見られました。そのようなことが無いよう、調査員になるであろう人を対象に、研修が試行されたということです。
そして、制度あり方検討委員会も設置され、その中で、調査員マニュアルは必要か?調査員が何人かいた場合、行政側と当事者団体側の比率は?聞き取りをするとき、どういう意識が必要か(研修内容とも共通する)?が話し合われたと報告されました。
聞き取りでは、とかくネガティブな視点から、何が出来ない≠ゥ?という質問になることが多いが、こういう聞き方は当事者をナーバスにさせ、また調子のいいときは出来ても悪いときは出来ないものがあるなど、単純に答えられるタイプの質問ではないので、十分に気配りをすることも必要ということが言われました。また、見かけだけで、「この人にはこういうことは聞かなくてもいいだろう」と即断するのも危険、という指摘もあったということです。

その他、判定をする際の判定ソフトというのが開発されたという報告もなされたのですが、このソフトも、全部で106項目に及ぶ質問事項全ての回答が埋まらないと作動しない、また、機械の反応がいい場合と悪い場合があるなど、課題は多いということでした。


長尾祥司さん


2−1.相談支援事業は今後どうなっていくのか
     障害者生活支援センターひびき センター長 高井博之さん

高井さんは、相談支援事業について、「今後は3障害(身体・知的・精神)一体型の支援となるため、一つの支援センターに任される事業はより範囲の大きなものになる。受けられる事業と受けられない事業はハッキリと意思表示をしたほうがいい」と助言していました。そして、本当の意味で障害者の自立というものを支援していない法律だけに、ピアカンよりもケアマネに比重が置かれているということです。
過去、国は一度、障害者のケアマネは必要ではないという態度を示したことがあるのに、今回、新法律の施行に乗っ取って、中身としては高齢者のケアマネ(地域での自立や社会参加を前提としない)に近いイメージでの障害者ケアマネを復活させるというのは、大変に不愉快な思いがする、と述べていました。
また、今後は就労と生活の区別がなくなり、一つの事業所が両方請け負わなくてはならなくなるという話のほか、国が福祉にかかる費用を安く押さえたいために、比較的軽度と判定された人にはホームヘルプやガイドヘルプ利用の支給が出ない、等級によって、お金をかけるかけないが、あまりにもハッキリしている、という話が出て、参加者も一様に表情を曇らせていました。
 

高井博之さん


2−2.相談支援事業は今後どうなっていくのか
     当センター ピアカウンセラー 大友章三

大友さんは、自立支援法下の生活支援事業では、あまりにもピアカン事業が軽視されている。ピアカン事業は、障害者が自立をしていく上で欠かすことの出来ない、絶対に消えてはならない事業で、行政(国)に対して、ピアカン事業の必要性を、今一度訴えていかなければならない、と述べていました。そして聞き取り調査の際に、調査員の中に当事者を入れることはもちろん必要だが、当事者のことをよく分かっている当事者(つまり、行政寄りではない当事者)でなければならない、と注意を促していました。
これから生活支援センターがどうなっていくかはまだ見えない部分があるが、今よりもっと忙しくなることだけは確実である、3障害一体となる以上、これまでのように、「自分たちは身体の事業所だから、精神については分かりません」という態度は、もはや通用しなくなる、と忠告していました。


大友章三さん



今回の部会では、障害程度区分や相談支援事業再編に関して、ジワジワと自立生活への希望と意欲が損なわれるような内容の報告が続き、すっかり暗いムードになっていました。しかしこういう時代だからこそ、より情報を共有するなど、連携プレーを強化し、常に制度運営について(例え内容には反対でも)報告をしていこうという見方で一致しました。


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