2008年度 対府オールラウンド交渉に参加しました


2008年度の対府交渉(オールラウンド交渉)が、去る2008年9月2日と9月9日、大阪府福祉人権推進センター(ヒューマインド)にて行われました。
折からの『ゲリラ豪雨』の不安があった中、両日とも多数の人が参加し、会場を埋め尽くしました。
まずは1日目(9月2日)の報告から行います。

内容的には、
自立支援法や府の財政再建での様々な課題についてやりとりしていきましたが、府の回答は自立支援法は各課とも春の時点よりトーンダウンし、「制度を持続可能とするよう予算の範囲内で検討」という回答が多くなされました。いくつかの項目で「課題をふまえ来年度に向けて予算要求していく」という回答を引き出したものの、主体的・積極的な姿勢は見られず、「財政難」を理由にした厳しい対応が目立った交渉でした(以下の協議項目と府の回答については、主催団体である障大連の資料より引用しました。)

●財政再建問題

・重度障害者医療費公費負担助成は重要な制度であり、1割負担化、償還払いによる利用者等への影響の大きさをふまえ、現行制度のまま存続されるよう努力する。
・ガイドヘルパー、日常生活用具の負担軽減策について、国に義務的経費化を要望しながらも国で見直されなければ、府で現行制度(地域生活支援事業市町村推進補助金)を予算要求する。
・府で議論が始まった「補助金の交付金化」について、基本的には障害者施策はなじまないと考える。もし施策によっては交付金化の方がよいと考えるなら事前に協議を行う。
・訪問看護利用料助成など来年度廃止される事業の存続について強い姿勢で臨んでいく。
・障害者権利条約について知事にレクチャーし、国内法の整備、市町村での整備に向け取り組む。

●介護

○盲ろう者通訳介助
・盲ろう者通訳介助制度について、二人派遣は映画等の私的な娯楽、飲食以外は制限しない。ギャンブルなどの行き先の制限もしない。1日8時間制限、作業所内1時間制限については問題の経過をふまえ一から協議する。
・盲ろう者に対応できる各市町村のガイドヘルパー数を把握し、ガイド資格、通介講座の上乗せ研修の課題も含めて、各市町村でガイドヘルパーの利用が進むよう方策を検討する。

○障害福祉計画(介護)
・府の第2期障害福祉計画の策定に向けて、サービスごと、障害ごと、市町村ごとに進捗状況(派遣時間数、利用者数)等、あらゆるデータを情報公開する。
・数値目標未達成の事業について分析が必要であり、市町村とワーキンググループを設置し検討している。

○各介護サービス
・ガイドヘルプ、重度訪問介護、行動援護等、全ての介護サービスが全市町村、全障害種別で適切に供給できるよう、また行動援護の府独自の従事者要件の問題も含め、市町村の制度や養成講座等の状況を把握し、今後の方策について協議する。
・精神障害者のホームヘルプ利用が進まないのは周知不足などの課題があり、この間、府で利用促進パンフを作成し配布してきたが、利用実態調査もふまえ今後の利用促進策を検討する。
・ピアヘルパーは当事者の就労やエンパワメントに必要な施策であり、今後の有効な活用策について検討する。
・施設ガイドは現在22市町村で実施されており、今後も当事者に周知するよう市町村に働きかけるとともに、市町村での実施状況(利用者数、派遣時間数や制限内容)を把握し、今後の方策を検討する。
・入院時のサポートについて、大阪市等のサポート制度や各市町村の実情を把握し、方策を検討し協議する。

●入所施設・地域移行

○障害福祉計画(地域移行関連)
・地域移行をより社会的な責任の下に推進していくために、「施設での長期入所は人権侵害」という認識について、府の第2期障害福祉計画に盛り込むよう文言について協議する。
・全障害種別で20%の地域移行を進めることや、新規入所者を12〜13%も増やすのではなく、GH(ガイドヘルプ)等により地域生活の可能性を精査していくことについて、各市町村とも検討していく。

○地域移行施策
・地域移行に向けての宿泊体験等の取り組みは極めて重要であり、国に制度化を要望していくとともに、来年度廃止される予定の府の地域移行促進事業について、存続に向けて予算要求する。
・ピアカウンセラー派遣事業について、地域移行の促進に向け市町村と協議しながら充実に努めるとともに、ピアカウンセラー等のスキルアップに向けて研修を実施する。
・地域移行支援センターについて今年度、実施時期が遅れていることから最終年度の期間を延長するとともに、地域団体でも実施できるよう効果的な方策について検討する。

○精神障害者施策
・精神障害者の退院促進事業について、国制度化により今年度から予算を拡大し(1.7倍)、ピアサポート事業にも取り組んでいくが、今後、一層の事業の発展に向け、地域の団体、事業所、自立支援協議会と更に連携を強めるよう方策を検討していく。
・精神障害者権利擁護システム事業は今年7月に廃止されたが、精神科病院内での人権侵害はなくなってはおらず事業の継続が必要なことから、団体の意見も聞きながら部を挙げて来年度何らかの形で復活できるよう予算要求していく。

1日目の交渉全景。この日は約400名が参加しました。

●グループホーム等・住宅

○グループホーム等
・自立支援法では世話人の配置基準や日額払いの見直し、ヘルパーの利用、深夜の常駐体制、身障者GHの制度化など様々な問題が残っており、8月に国に提起した重点要望について引き続き制度改善を要望していく。
・現行の国制度の夜間支援体制は巡回型でしか想定されておらず、人材確保は極めて困難であり、より実効性ある報酬単価を国に要望していく。
・国で改善がなされない課題については、GH等の運営安定化のために府においても来年度に向けて、GH等機能強化支援事業に加えて支援策を検討・協議していく。
・大阪府のGH等機能強化支援事業は、個々の入居者に対する出身市町村の加算であるため、交付金化され市町村にばらつきが出ると整合性がとれなくなるのでなじまず、継続要求していく。たとえ国の報酬がアップされたとしても、機能強化支援事業の存続について検討していく。

○公営住宅利用
・GH等の公営住宅活用について、現行の空家利用を新築物件でも認めてもらうなど効率よく活用できる方策や、大阪市内では府営住宅の利用が認められないという問題について住宅管理課と協議していく。

○消防法施行令問題
・消防法・改正施行令の来年4月実施に向けて、入居者の安全・安心を確保しながら、消防防災、障害福祉、公営住宅の担当課が連携してGH等で強制退去、入居拒否などの人権問題が発生しないよう、国(消防庁、厚労省)に対して利用実態を説明するなど強く働きかけていく。
・また、消防設備の設置・改造に向けては今年度、施設整備費補助等の活用について市町村に周知しており、国でも現在、極力負担がかからないように検討が進められているが、来年度以降に求められる設備設置・改造について対象件数や必要額を調査し、予算確保に努める。

●自立支援・作業所

○相談支援
・相談支援事業の評価指標やスキルアップについて、国のモデル事業(調査研究事業)を活用し、有効な支援方法を検討し協議していく。先駆的な実例にも学び、手法を確立していく。
・相談支援事業のプロポーザル等の導入については、適正なサービス提供に向けて市町村が適切に判断するよう情報提供する。プロポーザル等が安易に実施されないよう、また評価指標が確立されるまでの間はストップするなどの対策も検討していく。
・各市町村の三障害の相談支援事業所の設置状況等について、地域間格差もあることからその状況を集約し、今後更に充実させる方向で検討していく。

○自立支援協議会
・市町村の自立支援協議会は、現在23市町村+今年度内15市町村設置で計38市町村で整備する見込み。運営モデルの検討、アドバイザーの派遣、研修等を通じて、地域生活や地域移行などで有効に機能するよう支援していく。また、本来の自立支援協議会の機能がまだまだ発揮できていないことから、運営ガイドラインの作成も検討していく。
・大阪府自立支援協議会への障大連からの参加要望については持ち帰って改めて協議する。

○作業所等
・作業所や小規模通所授産施設から新体系への移行のために「定員10人から認める緩和策」を実施し市町村に文書等で周知してきた。また、今後も地域活動支援センターが安定して運営できるよう、国補助の増額等を強く訴えていく。
・地域活動支援センターへの移行が進まない原因は運営費の低さが考えられ、その対策、移行の支援策も含め作業所が抱える様々な課題について、市町村との連絡会において検討していく。
・府が作業所の補助金を5年間で打ち切る問題について、各作業所、小規模通所の実情と移行の困難等を把握し、移行できずに困る作業所が出ないよう対応策を検討、協議する。
・他市町村からの地域活動支援センターへの通所に際して、居住市町村が他市のセンターに通所している人数の補助を支払うことについて、市町村と検討を進める。

ここまで、1日目の報告でした。


2日目となる9月9日は、就労・教育・交通の3項目について、協議が行われました。
このうち、就労については、最初に大阪府から、以下のような報告が出されました(一部を抜粋)。

「障害福祉計画で、3年後までに800人の一般就労実現を目標としている。地域での受け皿となる企業の開拓や、職場定着後の、就労支援システムの構築をはかりたい。」
「働く意欲のある障害者の、働くことへのチャレンジを支援すると共に、企業における、障害者雇用への理解と取り組みを一層促進させている。」
「障害者の就業と生活を一体的に支援する、障害者就業生活支援センターの計画的な設置を促進している。今後、より効果的な施策を、国の法律の動向も見つつ、関係機関と連携を取って進めていきたい。」
「知的障害者と精神障害者の雇用については、今後は本格雇用を目指すものとし、一定規模の業務量の確保、サポート体制の在り方などが課題である。」
「支援担当者のスキルアップを図るための研修も必要との通達が、国から出された。」

これに対して障害者団体側からは、次のような質問が出されました。

「橋下知事の『維新案』では、各施策が大幅に削減・廃止される方向にある。知事は、これらの施策の意味や位置付け・経過を知っているのか?」

「実際問題、橋下知事の政策のもと、各施策の効果が今後、上がっていくのか?今の状況で、具体的に何が課題で、何を進めていくべきだと考えているのか?」
働く意欲を持つ障害者というが、実態は、社会環境ゆえに働く意欲を持ちたくても持てない人が多い。それを考慮せずに、一律に『意欲のある人を支援』という言い方をするのは、いかがなものか。」
「問題のひとつは、就労するにあたって、『自力通勤』を義務づけていること。通勤のためにガイドヘルプを使えるようにするとか、もっと通勤のための支援体制を充実させないと、『働く意欲』も何もあったものではない。」
「就労支援で最も必要なのはマンパワーだ。果たして今のマンパワーに関する認識でやっていけるのか?『連携を取らなくてはいけない』ということは、つまり、今現在連携が充分取れていないという事ではないか?何年も前から、同じことを言っているぞ。」
「就労移行支援事業が、うまく一般就労に結びつくのか?」

これに対して大阪府からは、
「橋下知事のPT案が出た時はビックリした。目的とやり方を何回か説明した。
今は知事も、就労移行支援が必要なものであると認識している。」
「就労移行支援事業に移行する事業所は増えてきており、効果は徐々にではあるが、出ている。今後、よりうまく就労に結びつくように、昨年度から、『就労以降人材養成研修』というのをおこなっている。」
「『意欲のある人だけ』という問題については、より多くの人に意欲を持って頂きたい。そのために、各事業所のスタッフにおいても、側面的に支援してもらいたい。」
「自力通勤に関しては、
今年度から自力ではなくても、例えばヘルパーを利用していても通勤可能という条件に、改められている。」

怒号に次ぐ怒号。不満炸裂となった、交渉会場


障害者団体側の代表の方々 大阪府(行政)側の回答団。画像は就労の交渉の時


次に教育(就学)についての協議が行われました。
教育では、おもに高校受験の際の、志望校への申し込み(願書提出)期限について、問答が行われました。
現状では、
志望校(特に府立の)側の手続き・準備の都合で、障害者の申し込み締め切りが早くなっており、これは公平とは言えません
それだけではなく、特に知的障害者と健常者とでは、明らかに学力に違いがあり、それでも『公平な競争』という考え方のもとに、一律に健常者のためだけの受験基準で知的障害者も受験させるというのは、公平どころか逆に不公平に転じます。
障害者に対しては『公平性のため』と称して妥協をする事を押し付け、実態としては排除してきた。それについてどう思うんや!という強い抗議がなされましたが、府から手応えのある回答はありませんでした。

学力向上という概念と、共に生きるという概念は、相容れない部分があります。
学力も大切なことは否定しませんが、ひとつの尺度に偏重するあまり、ほかの重要な面がなおざりになるのは、逆に差別を招く結果になるでしょう。


最後は交通についての協議が行われました。
大阪府から、昨年度、ホームからの転落事故が9件(健常者も含む)があったと報告されたのを受け、ホーム柵の普及を各鉄道会社に促すこと、そしてバラフリー化に向けての実態を、より調査することが要求されました。
また、信号機において、視覚障害者用の押しボタンのところまで点字ブロックが誘導されていないため、たどり着けない、という指摘がなされました。
早急に府として、行政指導を行うなどの策をとり、今後、バリアフリーが不十分なために事故が起こるという事が、無いようにしてもらいたいという要望が出されたのですが、府の対応は、何ともピントの外れた、噛み合わないものでした。
曰く、
「大阪府が直接鉄道を持っているわけではないから、鉄道の設備のことはよく分からない。」
ということで、何故もっと、相手が言っている話に対して回答する、という、当たり前の対話が出来ないのかと思いました。

当日、参加者は熱気にあふれ、何回も怒号が飛んでいたと思いますが、裏を返せばそれだけ、府側がまっすぐに対応しようとしていないという事です。
特に
教育・進学については、秋の内にまた協議する場を設けるということで、議題自体は何十年も出されているものだけに、一層進展することが期待されます。

当日参加されたみなさん、本当にお疲れ様でした。


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