テーマ:障害者自立支援法はどう変わるのか
〜4月からの改正について〜
2009年3月20日(金=祝日)、今年度第3回市民講座を、豊中市中央公民館にて開催致しました。
2006年の、障害者自立支援法開始から3年、この間、障害者の生活は大きな影響を受け続けてきました。
一方で国は、「3年を一つの単位として制度の見直しを行う」という方向を、自立支援法開始当初から示しており、この春がその『見直し満期』という事になります。
政府与党も昨年3月より、『抜本的見直し』をすると打ち出していた、この自立支援法。では具体的に何が見直しされ、新年度よりどう変わるのか?そして豊中市の福祉施策は、この先どうなってゆくのか?それらの点について聞かせていただきました。
講師に来て頂いたのは、障大連事務局長の古田朋也さんと、豊中市障害福祉課主幹の松山とも代さんです。
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はじめに古田さんが講演されました。古田さんは、
「2003年に支援費制度が始まり、ようやく障害者が、どの地域に住んでいてもサービスを使える時代が来たと思ったら、翌2004年の5月頃から介護保険との統合案が出てきて、その頃から毎年のようにコロコロ制度が変わるようになった。」
と、国の制度が出来て以降の経緯を振り返りました。そして今回のテーマである『自立支援法はどう変わるのか』については、
「もう少し具体的なものが見られるのかと思っていたが、まだ充分示されていない。4月から報酬は変わり、全体で5.1%アップとなった。政府与党は、見直しを1年後に控えた昨年3月頃に、『抜本的見直し』を打ち出したのだが、結局報酬の変更以外、制度の枠組みや根本的な考え方は何も変えられていない。今後は新しい報酬加算の考え方に従って、請求業務をしないといけないので、事務方の現場などは、5月頃まで大変だと思う。」と述べておられました。総じて、期待したほどの見直し内容は示されなかったようですね。
次に、大阪府の動きについて触れ、
「去年4月のPT案(大阪府 財政再建プログラム試案)の時は本当にビックリした。大阪府庁を取り囲んで、抗議行動をおこなった。その結果、障害者の暮らしに直結している制度は、何とか守り切る事が出来た。もう一週間行動を起こすのが遅かったら、守れないところだった。」と述懐していました。
また、ガイドヘルプについて、
「負担を課すのは止めるべきだ。ガイドヘルプは障害者の社会参加には不可欠なものであり、大阪が国よりも早く、無料で始めた。それをまた、お金を取って障害者を家に引き籠もらすような事態にはしてはいけない。」と訴えられ、日常生活用具についても、
「大阪府は負担上限を廃止する方向を打ち出し、今回は何とか撤回させたが、2年後には廃止される可能性が出てきている。これについても負担上限は無くすべきではなく、どうしても上限を無くさざるを得ないというのなら、せめて市町村としては一切の負担を課さないで欲しい。特に政府与党の財政再建案でも、『応益負担から応能負担に戻す』という案が出ている昨今、一律負担を求める必要は、もう無いのではないか?」と、府の施策に対して疑問を投げられていました。
さらに医療費についても、
「これまでは月2回の診療として、1回500円の自己負担が課せられていた。これを1回800円に引き上げるという案が出されたが、例え月600円の負担増でも、年収の少ない多くの障害者にとってはダメージになると訴えた。その結果、来年3月までは現行のままとなる様だが、来年4月以降は引き上げられる可能性が濃厚だ。」との状況が報告されました。
その後は、自立支援法について改めて検証がなされました。
「国の言うことだから、どんなに良いことを言っていても、必ず裏がある。」と切り込み、参加者もドッとウケていました。
いろいろ、従来から言われている問題点が再指摘された中、最後に区分認定の判定基準について、
「これこそ早急に、抜本的見直しが必要なのに、今回の見直しでは何も変化無し。3年後に行われる次の見直しまで、先送りにされた。今でも二次判定でのやり直しが非常に多い。今年が見直し期限なので、また調査をやり直しとなっているが、そのためにまた相当なお金がかかるという、バカバカしい結果になっている。」と憤慨されていました。
各団体や各自治体だけの頑張りでは大変しんどくなってきているが、今後も障害種別の違いや地域格差を乗り越える、幅広い視野を持った運動展開をしていきたい、と抱負を述べられていました。
64名の方が参加された、今回の市民講座。会場はほぼ満席となりました。 | 古田朋也さん |
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次に松山さんが講演されました。松山さんは、パワーポイント(スライド)で表示した豊富な資料を示しながら、これからの、豊中市の福祉計画を説明されました。その中で松山さんは、
「現在豊中市では、『第2期豊中市障害福祉計画』の策定を進めているが、策定を始めるにあたり、障害当事者3,000人を対象に、今の生活実態等についてアンケートをおこなった。サービスを利用している人、していない人両方に対しておこなったが、非常に目立った回答の一つに、『余暇を家の中で過ごしている』というのがあった。これは、まだまだ障害者と社会とをつなぐ仕組みが整っていないことを表している。」
と、自ら言及されていました。
また、このことに関連して、相談支援のサービスを利用した事の無い障害者にその理由を聞いた調査結果も報告され、一番多い理由は
「相談出来る場所の情報が無いので、どこに相談したらいいか分からない。」だったという事です。このほかには、
「障害の程度や病気が重くて、相談しに行けない」、「自分に合った専門的な相談に乗ってもらえるところが見当たらない」といった理由が紹介されました。
さらに、今後の相談支援体制に向けて、障害当事者が必要だと感じているものとして、
『家族の悩みを受け止める家族相談員』、『小学校単位など、ごく身近な地域規模で設置される、福祉何でも相談所』、『医療・福祉・保健・教育など、本来分かれている各分野が一体となって展開する、一貫した相談支援体制』などが挙げられたという事です。
豊中には、『豊中市障害者自立支援協議会』という組織があり、その中でさらに『相談支援機能強化部会』、『精神障害者地域移行促進部会』、『障害者就労促進部会』という各部会が存在しています。
今後もそれぞれの機能をフルに活かしながら、
『個別の問題の、地域での共有化(ミクロからマクロへ)』、『障害当事者や家族を孤立させない取り組み』、『権利擁護の強化(財産安全管理、後見人制度など)』、『日中活動の場と家をつなぐ居場所の確保』などの実行を、目標・課題にしたいという事でした。
スライドを使用して講演する、松山さん |
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最後に質疑応答が行われましたが、この中で古田さんより、
「今まで施設で暮らしてきた人が、地域移行でグループホームに住む場合、1泊2日の体験利用が出来るという制度が、4月から出来る。そしてその際、グループホームに対してお金も下りるようになった。」という事が報告されました。近く、施設からの移行だけではなく、親元からグループホームに移行する場合でも、この制度が適用される様になるという事です。
今、厚生労働省の持つ、『地域移行』の概念は、「施設・在宅(親元)・病院のいずれから出る場合も指す」という方向に、変わってきているそうです。
「家族が面倒を見るという考え方には、もう縛られてはいけない。80歳を過ぎた親が、死ぬまで我が子の面倒を見るなんて事はあってはならないし、そのためにも、もっと若い内から自立出来る仕組みが必要だ。」と呼びかけていました。
松山さんへはアンケートに関して、「記載の内容についてもっと詳しく知りたい。」、「結果をどう活かすのか?」といった質問が多数寄せられていました。松山さんは、
「みなさん本当に、日々の実情を細かく書いておられた。『こんなしんどい状況なのだから、もっと施策を充実すべきだ』という回答が一番多かった。この結果をもとに、施策の一部について見直しを行う。情報提供や権利擁護、日々の居場所の問題など、まだまだ不十分だという指摘が多かったので、計画の項目数に加えた。家族の方からは、緊急時に安心して本人を預けられる場所が欲しいという記載もあったので、ショートステイの緊急利用についても、もっと充実させていきたい。」
と応答されていました。
当日はお忙しい中、64名の参加者が集まり、大変緊迫した雰囲気でした。
参加された皆さん、講師のお二方、お忙しい中、本当に有難うございました。
質疑応答の場面 | 会場の様子をもう一枚 |